警備員は人の命や財産、公共の秩序なども守る重要な仕事です。警備業法によりビルや商業施設、工事現場など、警備員を必ず配置しなければいけない場所が定められています。
そのため警備員の需要は常に高いものの、求職者がほかの業界と比較して少なく、人手不足の警備会社が多くなっています。
1.警備業界を取り巻く採用市況
厚生労働省によると、2022年12月時点の保安業の有効求人倍率(パート含む)は7.43倍で、全体平均有効求人倍率1.45倍と比較して非常に高い倍率となりました。
保安業の有効求人倍率はかねてより高く、2019年は8.32倍、2020年は6.83倍、2021年は6.11倍と推移していました。
令和4年はコロナ禍からの経済の回復にともない、有効求人倍率も上昇したと考えられます。
※保安の職業には施設警備員や道路管理員、交通誘導員だけでなく、自衛官や消防官、警察官、海上保安官なども含まれます。
2.警備員の人手不足の原因
1.進まない警備業界の働き方改革
警備業は働く環境や条件がほかの業界と比較して劣る場合があります。
以下にて詳細をご説明します。
就業環境が悪い
警備業には24時間警備の現場も多く、夜勤や早朝の勤務があります。
とくに2号警備(交通誘導やイベント警備などの雑踏警備)の場合、野外勤務となるため夏や冬の気温ではさらに厳しい労働条件です。
また、勤務地によってはトイレや休憩場所がないケースもあり、体力的な負荷が大きいため敬遠されてしまいます。
勤務時間の拘束が長い
警備の現場では8時間のフルタイムシフトが求められることが多いです。
ほかの現場業では2〜3時間など都合に合わせて短時間のシフトも可能ですが、警備業では導入が遅れています。
導入が遅れる理由としては「勤怠管理や業務管理の大変さ」が挙げられます。
警備員は現場へ直行直帰することが多く、勤務開始や終了の連絡を本社に電話でおこなっている企業が多いでしょう。
しかしこの方法では、短時間シフトのスタッフが増えると勤怠の把握が難しくなります。
また、警備員は現場の情報共有が必須です。
短時間シフトで頻繁に警備員が回転すると、正確な情報共有ができなくなる可能性があるため、必然的に拘束時間が長くなる傾向があります。
給与水準が低い
警備員の平均年収は約340万円、アルバイト・パートの平均時給は1,042円で、そのほかの職種と比較して低い傾向にあります。
警備の仕事は勤務態度や勤務実績が目に見えて反映されづらいため、給与アップが少ないという側面もあります。
さらに警備業界は、コロナ禍において公共工事の工期見直しや施設休業などの影響を受け、経営に行き詰まる企業が増えました。
その結果、警備会社間で価格競争が起こり、警備料金の低下を招いたと考えられます。
2.警備員のキャリア形成の難しさ
警備員としての国家資格には「警備員指導教育責任者」「機械警備業務管理者」「警備員業務検定」などがありますが、資格取得しても年収幅が300~600万円程度と会社によってまちまちです。
資格の取得までにも数年の実務経験を要するため、年収をすぐに上げたい場合は警備業自体から離れてしまうこともあります。
3.警備業のイメージ
警備業は3K(きつい、汚い、危険)のイメージが根付いており少子高齢化が進む現代では若者の参入が少なくファーストキャリアとしては程遠い業種となっています。
4.警備員の離職率の高さ
2021年の厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、警備員の平均勤続年数は9.5年でした。
全業界の平均勤続年数は12年ほどのため、警備業の離職率の高さがうかがえます。
また、ディップ株式会社が2020年11月5日~11月11日に警備業就業者に対しておこなったアンケートでも「これまでに離職・転職を1度でも考えたことがある人」は約8割という結果でした。
3.警備員が職場に求めること
ここまで警備業界の人手不足の体質についてご説明しましたが、警備業界の中でも人手不足が深刻な会社とそうでない会社が存在します。
ここでは警備員の定着理由と離職理由、警備員が本当に職場に求めていることを深堀りしていきます。
1.警備員の定着理由と離職理由
警備員の定着理由と離職理由※をランキング形式でご紹介します。
警備員の定着理由ランキング
1位:勤務時間が希望と合っているから2位:勤務日数が希望と合っているから3位:人との関りが適度だから4位:シフト対応が柔軟だから5位:体力的な負担が小さいから6位:社会貢献度が高いと感じるから7位:周囲の人に監感謝されるから8位:Wワークがしやすいから9位:人に誇れる仕事と感じるから10位:仕事内容の割に給与が高いから
警備員の離職理由ランキング
1位:体力的な負担が大きいから2位:仕事内容の割に給与が安いから3位:精神的な負担が大きいから4位:キャリアアップがのぞめないから5位:人に誇れる仕事と感じられないから6位:勤務時間が希望と合っていないから7位:シフト対応が柔軟ではないから8位:勤務日数が希望と合っていないから9位:Wワークがしづらいから10位:社会貢献度が低いと感じるから
上記のランキングによると、やはり「勤務時間と勤務日数の希望」や「給与」は重要な項目だとわかります。
また警備員ならではの「体力面」のきつい仕事も、勤務継続するにあたってネックとなるようです。
2.警備員が職場に満足している点
上記のような「勤務時間や日数、給与、仕事柄の体力面」など変更の難しい項目以外で、警備会社が意識できることは何かあるでしょうか。
警備員が警備会社に対して満足している点のランキング※によると、以下の5つの項目が重要だとわかりました。
警備会社と就業先の関係が良好である…21.1%
保険加入などの手続きを丁寧におこなってくれる…18.3%
1つの現場に同じ警備会社から就業している人が多い…16.6%
就業にあたっての体調管理、危機管理など就業規則が整っている…15.2%
責任者や本部の人に相談できる関係性である…13.6%
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